1 May 2014

Deutsch Amerikanische Freundschaft ‎– Für Immer [LP/Virgin ‎– V 2239 1982 UK]

1982年にリリースされたD.A.F.の通算5枚目、D.A.F.のVirgin Records移籍後の第3弾アルバム。プロデュースは前作に引き続きConny Plankが担当している。このアルバムでも1981年にリリースされた"Alles Ist Gut"、"Gold Und Liebe"同様にシーケンサーを駆使した重厚なシンセ・ベース、Robert Görlの生ドラムによるハンマー・ビートに、Gabi Delgado の男臭いボーカルというシンプルな構成は変わっていない。しかし、所謂Body Music3部作のラストを飾る本作ではこのスタイルがこなれてきており、前2作がモノクロな印象があるのに対し、シンセ・ベースもより重厚になり、効果的なSEやパーカッシブなドラミングも聴くことが出来、音色が豊かになった印象だ。特にA2.Ein Bisschen Krieg では迫り来るようなシンセ・サウンドにGörlのハンマー・ビートが炸裂、Gabiのボーカルも圧倒的かつ強迫的で、Electric Body Musicの雛形とも言えるサウンドを聴く事が出来、また、シングル・カットされたA4.Verlieb Dich In Mich の軽快なダンス・サウンド、そして名曲B1.Kebab - Träume はこのアルバムの聴き所であろう。このアルバムに収録された"Kebab - Träume" は1980年にMuteからリリースされた7インチ・シングルの再録バージョンで完全に別物。ガレージ・パンクっぽい初期のサウンドから重厚なシンセにメタリックなハンマー・ビート、さらに、かなりダンサブルにアレンジがなされており、「Deutschland, Deutschland, alles ist vorbei」の大合唱はメチャクチャ格好いい。そして、B5.Wer Schön Sein Will, Muss Leidenは哀愁漂うシンセ・サウンドとGabiの淡々として歌い上げるボーカルが印象的なこのアルバムのラストを飾るに相応しい名曲。D.A.F.はこのアルバムを最後に一旦解散し、それぞれソロ活動に入り、ボーカルのGabi Delgado は同じくVirgin Recordsからアルバム「Mistress」、Robert GörlはMuteに戻り、アルバム「Night Full Of Tension」を発表している。シンセ・ベース、生ドラム、エロチックでワイルドなボーカルというミニマムな構成でサウンドを成り立たせた、プロデューサーのConny Plankの一種発明的なサウンドはこのアルバムで完成を見る。


《Track List》
A1.Im Dschungel Der Liebe
A2.Ein Bisschen Krieg
A3.Die Götter Sind Weiss
A4.Verlieb Dich In Mich
A5.Geheimnis
B1.Kebab - Träume
B2.Prinzessin
B3.Die Lippe
B4.Verehrt Euren Haarschnitt
B5.Wer Schön Sein Will, Muss Leiden


30 March 2014

Chris And Cosey ‎– Trance [LP/Rough Trade ‎– Rough 44 1982 UK]

元Throbbing Gristleのエレクトニクス担当のChris CarterとCosey Fanni Tuttiで結成されたエレクトロ・デュオChris And CoseyのRough Tradeから1982年にリリースされた2ndアルバム。レコーディングはロンドンから北東に170キロ離れたノーフォーク地方にある彼ら自身のスタジオで行われ、サウンド的には前作同様に反復する打ち込みによる様々なリズムパターンに浮遊感漂うシンセサウンドやノイジーな効果音、ボイス・コラージュなどを被せていくという無機質でミニマムなエレクトロ・サウンドであるが、リズムはより強化され、輪郭がハッキリして聴きやすくなっている。とは言えポップな面もありつつもこのアルバムでも、インダストリアル・バンド出身者らしく、様々な毒(ノイズ)はキッチリ盛り込まれているのでインダストリアル・ミュージック・ファンでも抵抗無く受け入れられるだろうし、インダストリアルに抵抗のあるテクノのファンにも是非聴いてもらいたい。また、この時期まではThrobbing Gristle時代に使用していた機材を使っているせいかThrobbing Gristleのアルバム等で聴き覚えのあるサウンドが所々に登場するが、特にA2.Lostで聴かれる打ち込みのリズムはThrobbing Gristleの12インチシングルの「Discipline」を想起させる。Chris And Coseyのアルバムの1stやこの2ndアルバムを聴くにつけ、Throbbing Gristleのサウンドの骨格はChris Carterが作っていたのだと再認識させられた。尚、このアルバムは長らく廃盤になっていてたが、2012年に日本のBirdsongからオリジナルの8曲にボーナストラック2曲を加えて、10曲入りで再発されている。


《Track List》
A1.Cowboys In Cuba
A2.Lost
A3.The Giants Feet
A4.Impulse
B1.Re-Education Through Labour
B2.Secret
B3.Until
B4.The Gates Of Ancient Cities


26 February 2014

Deutsch Amerikanische Freundschaft ‎– Gold Und Liebe [LP/ Virgin ‎– 2218 1981 UK]

1981年にリリースされたD.A.Fの通算4枚目、D.A.F.が分裂後にGabi Delgado (vocal)、Robert Görl (drums)のデュオとなり、MuteからVirgin Records移籍後の第2弾アルバム。プロデュースは前作に引き続きConny Plankが担当している。因にこのアルバムはトリオから邦題「愛と黄金」として国内盤もリリースされており、ジャケットは前作を踏襲した黒を基調としたハードで男臭いイメージのものになっている。さて、本作は基本的には前作同様にConny Plankが作ったと思われるシーケンサーによる幾重にも重ねられた野太い反復シンセベースに、Görl の生ドラムによる筋肉ハンマー・ビート、Gabiのエロティックかつ強迫的ボーカルが被さるという贅肉を極限まで削ったシンプルかつミニマムなサウンドではあるが、曲によっては女性コーラスを取り入れたり、ラテン・パーカッションなども加えるなど前作では見られなかった凝ったアレンジも施されている。A1.Liebe Auf Den Ersten Blick でシンプルで淡々としたダンス・サウンドから幕開けし、スペイン語でタイトルが付けられたA2.El Queでは上記の様に女性コーラスとラテン・パーカッションがフューチャーされたラテン乗りのダンス・サウンドを聴く事が出来る。上記の2曲に加え、A3.Sex Unter Wasser A5.Goldenes Spielzeug もシングルカットされており、AサイドはD.A.F.にしてはポップな曲(かなり捻くれているが)が揃うが、
Bサイドは彼ららしい本領発揮のダークでエレクトロ・パンクなサウンドとドイツ語特有の硬質な感触が異様な緊張感を醸し出している。ナチスの軍隊の行進を思わせるサウンドのB2.Muskel やノイジーなインスト曲のB3.Absolute Körperkontrolle 、そして、彼らの中でも代表的なエレクトロ・パンク・サウンドでGabiの圧倒的なボーカルとGörlのハンマー・ビートが炸裂するB4.Verschwende Deine Jugend はこのアルバムのクライマックスだろう。

《Track List》
A1.Liebe Auf Den Ersten Blick
A2.El Que
A3.Sex Unter Wasser
A4.Was Ziehst Du An Heute Nacht
A5.Goldenes Spielzeug
B1.Ich Will
B2.Muskel
B3.Absolute Körperkontrolle
B4.Verschwende Deine Jugend
B5.Greif Nach Den Sternen


31 January 2014

SPK - Garibaldi's 1979[Audio File/ Unofficial 1979 AUS]

1979年にオーストラリアのシドニーで結成されたインダストリアル・バンド''SPK''の初期のライブ。結成時の詳細は《→This》。1979年バンド結成からバンド解散に至るまで発表する作品の度に''S.P.K.''を頭文字にしたSystem Planning Korporation、Sozialistisches Patienten Kollektiv、Surgical Penis Klinik、Seppukuなどのバンド名を名乗り、目まぐるしいメンバー・チェンジ、まさに変幻自在に作風を変化させてきた彼らだが、このライブでは彼らの原点と言うべきサウンドを聴く事ができる貴重な音源である。SPKの初期のサウンドを結成の中心となったオリジナル・メンバーのGreame Revell (a.k.a. EMS AKS、Operator、Oblibion)とNi/H/iLことNeil Hillは、インタビューで「我々はジャーマン・ロックのNeu!、CAN、Kraftwerkに加え、フランスのエレクトリック・パンクに影響を受けているからね。」と語っている。それはまさにパンクをベースにハーシュなエレクトリック・ノイズを加えたアグレッシブ且つ異型なインダストリアル・パンク・サウンドである。また、彼が言うフランスのエレクトリック・パンクとは恐らくフランスのパンク・バンド''Metal Urbain''の事と思われ、このライブでは、彼らの曲「Panik」をカバーしている。さて、ライブの方は1983年にリリースされた初期シングル集のアルバム「Auto-Da-Fé」に収録されている 曲でお馴染みのラインナップで、演奏時間はオリジナルからは大分短縮されているが、Ni/H/iLの突き抜けたボーカルとライブならではの荒々しくノイジーな演奏を披露している。尚、この音源はUnofficialだが、Vinyl-on-demandレーベルから2008年に正式にリリースされた、SPKの様々のライブ音源をコンパイルした6枚組LP「Dokument III0 1979 - 1983」で聴く事ができる。

《Personnel》
 EMS AKS: syntheseizer
 Ne/H/il: synth, vox
 Danny Rumour: guitar
 David Virgin: bass

《Track List》
1.Slogun
2.Panik
3.Factory
4.Contact


13 December 2013

New Order ‎– Movement [LP/Factory ‎FACT 50 1981 UK]

1980年5月18日にJoy DivisionのボーカルだったIan Curtisの自殺で、Joy Divisionは解散を余儀なくされ、残ったメンバーはバンド名をNew Order (ニュー・オーダー)と改名し、Bernard Sumner (vo,g,key)、Perter Hook (b,per)、Steven Morris (ds,key)のオリジナル・メンバーにSteven MorrisのガールフレンドのGillian Gilbert (g,key)を加えた4人で再スタートを 切る。1980年10月25日には英国マンチェスターで4人編成となったNew Orderの初ギグが行われ、1981年1月26日にはBBCの番組「John Peel’s BBC Radio 1」のスタジオライブに出演。「Truth」、「Senses」、「I.C.B.」、「Dreams Never End」の4曲を披露した。その後、1981年1月に1stシングル「Ceremony」(全英チャート34位)、1981年9月に2ndシングル「Procession」(全英チャート38位)の2枚のシングルをリリース。そして、1981年11月に発表されたのが、この1stアルバム「Movement」(全英チャート30位)である。プロデューサーはJoy Divisionの時と同じくMartin Hannettが担当し、アルバム・ジャケットのデザインも同じくPeter Savilleが担当した。アートワークはイタリアの未来派のアーティストFortunato Deperoによる1932年の博覧会「Futurismo Trentino」向けに作ったポスター作品がモチーフとなっている。さて、音の方はボーカルをPeter Hookが担当したA1. の「Dreams Never End」でJoy Divisionの影を振り払うような軽快なギター・ポップ・サウンド(この曲はNew Orderの中でも上位を争う名曲)を展開してスタートするが、A2.以降はまだIan Curtisの幻影に支配された陰鬱な曲が並び、ボーカルを担当したBarnerd Sumnerもこの時点ではIan Curtisをかなり意識していて、Ian Curtisの自殺からわずか1年足らずとういう事もあり、呪縛から逃れられない彼らの苦悩が伺える内容になっている。彼らの後に核となるエレクトロ・サウンドも、このアルバムの時点では、まだ限定的かつ実験的であり、試行錯誤の段階であったのだろう。それでも、独特な高音域のベースを主体に、リズムボックスやエレクトロ二クスを使用した曲などは、粗削りだが所々に今後の彼らの方向性がわずかながらも伺える。もがきつつも、とにかく前に進もうとする彼らの意思を強く感じさせる作品。後年、Peter Hookもインタビューで「あの時は、とにかく早く作品を出すことが重要だった。」と語っている。まだ、Joy Divisionの影を引き摺ってるサウンドという事もあり、New Orderファンにはあまり評価が高くないアルバムだが、Joy DivisonとNew Orderを繋ぐミッシングリング的役割を果たした重要なアルバム。特に、A1.「Dreams Never End」はNew Orderの中でも上位を争う名曲である。


《Track List》
A1.Dreams Never End
A2.Truth
A3.Senses
A4.Chosen Time
B1.ICB
B2.The Him
B3.Doubts Even Here
B4.Denial



 


29 November 2013

Glaxo Babies ‎– Nine Months To The Disco [LP/Heartbeat Records HB2 1980 UK]

Glaxo Babies (グラクソ・ベイビーズ)は1977年に英国ブリストルで結成されたPost-Punkバンド。地元のアート・スクールに通うDan Catsis (guitar)と地元でジャズ・ミュージシャンをしている父を持つTom Nichols (bass)が中心となり、Rob Chapman (vocal)、Geoff Alsopp  (drums)を誘い入れて結成された。グループ名は世界的な製薬会社のグラクソ製薬から取って付けられた。それは、彼らの歪んだ広告戦略への抗議の意味を含めての事らしい。結成のわずか3週間後には地元ブリストルので最初のライブが行われた。その後も地元でのライブを続ける中で地元のインディペンデント・レーベルHeartbeat Recordsと契約し、1979年1月に4曲入りEP「This Is Your Life」をリリース。このシングルはBBCの人気DJ、John Peelに絶賛されて、グループの名前はインディペンデント・シーン以外でも、広く知れ渡るようになる。 次のシングルの「Christine Keeler」ではファンクやダヴを取り入れたサウンドに傾倒し、その流れでアバンギャルドな要素を深め、同郷のThe Pop Groupとも交流を深めていく。しかし、この流れに違和感を持ったボーカルのRob Chapmanが脱退。入れ替わりにボーカルではなくインストゥルメンタリストのTim Aylettが加入、さらにサックス奏者のTony Wrafterも加えて、ドラムもGeoff AlsoppからCharles Llewelyにメンバー・チェンジした。そして新らたの編成で1980年に発表されたのがこのファースト・アルバム「Nine Months To The Disco」である。メンバーチェンジを経て、ボーカルが居なくなった事もあり、サウンドはさらに、フリージャズ、ファンクをベースにやダヴ、インダストリアル、現代音楽的な要素を取り入れた実験色の強い混沌としたサウンドに変貌しており、The Pop Groupの影響を色濃く伺わせる。A1.「Maximum Sexual Joy」のようなファンク・ナンバーからA2.以降のThe Pop Group風あり、インダストリアルあり、フリー・ジャズ風ありと一言では到底言い表せないサウンドが詰まった大傑作。このアルバムが彼らのオリジナルとしては結局ラスト・アルバムになってしまうがThe Pop Groupよりボーカルが入っていない分、こちらの方がよりその攻撃的サウンドが楽しめるし、個人的にはこちらの方が好みである。


《Track List》
A1.Maximal Sexual Joy
A2.This Is Your Vendetta
A3.Seven Days
A4.Electric Church
A5.Nine Months To The Disco
B1.Promised Land
B2.The Tea Master And The Assassin
B3.Free Dem Cells
B4.Dinosaur Disco Meets The Swampsstomp
B5.Conscience
B6.Slim
B7.Shake (The Foundations)


13 November 2013

The Pop Group ‎– For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder? [LP/Rough Trade ‎ROUGH 9 1980 UK]

1stアルバム「Y」でセンセーショナルなデビューを飾った、英国ブリストル出身のPost-Punkグループ、The Pop Groupの1980年にRough Tradeからリリースされた2ndアルバム。これが彼らのオリジナル・アルバムとしてはラスト・アルバムになる。このアルバムの録音前にベーシストのSimon Underwoodは脱退。入れ替わりにGlaxo Babies(グラクソ・ベイビーズ)のメンバーだったDan Katsisが加入する。ジプシーの子供が口づけをしているという衝撃的なレコード・ジャケットはAndre Kertesz が1917年に撮影した物。このアルバムにはアメリカのラップ・グループThe Last Poets(ラスト・ポエッツ)とのコラボレーション曲「One Out Of Many」も含まれている。「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?= 我々はこの先どれほど大量殺戮を見逃し続けるのか?」と題されたアルバムはそのタイトルが象徴するように、楽曲だけではなく、初回プレスのジャケットには世界各地の大量虐殺の事例やIRAの少年兵士、さらに軍隊の侵している犯罪行為の写真がコラージュされたパンフレットが挿入されるなど、彼らは過激な政治的メッセージを表明していた。さて、音の方は1stアルバムで見られたような、ファンク、ジャズ、レゲエ、ダブ、パンクなどが渾然一体としたサウンドが怒濤のように繰り広げられるが、この2ndアルバムではよりリズム隊が強化され、よりファンキーで明快なサウンドが提示されている。一方、Mark Stewartのボーカルはほとんどアジテーションと呼べるもので、抑えきれない衝動を叩きつけている感じだ。歌詞には国名などの固有名詞が次々と出てきて、政治的で強烈な告発がなされている。だが、この過激な政治的姿勢を取り続けるリーダーのMark Stewartに対して、他のメンバーは嫌気がさし始め、次第にグループ間に軋轢が生じるようになる。それでも、そういう状況下で収録されたこのアルバムは、楽器がぶつかり合う様な異常なテンションの高さで演奏されており、バンド間の緊張関係がそのままサウンドになって表れた、爆発度においては1stを凌駕した傑作。結局、このアルバムがリリースされる頃にはバンドは崩壊しており、解散状態の中でデモやライブを収録した編集盤の「We Are Time」をリリースを最後にバンドは正式に解散する。このテンションの高さ故にバンドは長く続かなかったが、彼らが残した攻撃的で混沌としたサウンドは、現在においても古さを感じないし、彼らが後生のバンドへ与えた影響は決して小さくない。


 《Track List》
A1.Forces Of Oppression
A2.Feed The Hungry
A3.One Out Of Many
A4.Blind Faith
A5.How Much Longer
B1.Justice
B2.There Are No Spectators
B3.Communicate
B4.Rob A Bank