29 November 2013

Glaxo Babies ‎– Nine Months To The Disco [LP/Heartbeat Records HB2 1980 UK]

Glaxo Babies (グラクソ・ベイビーズ)は1977年に英国ブリストルで結成されたPost-Punkバンド。地元のアート・スクールに通うDan Catsis (guitar)と地元でジャズ・ミュージシャンをしている父を持つTom Nichols (bass)が中心となり、Rob Chapman (vocal)、Geoff Alsopp  (drums)を誘い入れて結成された。グループ名は世界的な製薬会社のグラクソ製薬から取って付けられた。それは、彼らの歪んだ広告戦略への抗議の意味を含めての事らしい。結成のわずか3週間後には地元ブリストルので最初のライブが行われた。その後も地元でのライブを続ける中で地元のインディペンデント・レーベルHeartbeat Recordsと契約し、1979年1月に4曲入りEP「This Is Your Life」をリリース。このシングルはBBCの人気DJ、John Peelに絶賛されて、グループの名前はインディペンデント・シーン以外でも、広く知れ渡るようになる。 次のシングルの「Christine Keeler」ではファンクやダヴを取り入れたサウンドに傾倒し、その流れでアバンギャルドな要素を深め、同郷のThe Pop Groupとも交流を深めていく。しかし、この流れに違和感を持ったボーカルのRob Chapmanが脱退。入れ替わりにボーカルではなくインストゥルメンタリストのTim Aylettが加入、さらにサックス奏者のTony Wrafterも加えて、ドラムもGeoff AlsoppからCharles Llewelyにメンバー・チェンジした。そして新らたの編成で1980年に発表されたのがこのファースト・アルバム「Nine Months To The Disco」である。メンバーチェンジを経て、ボーカルが居なくなった事もあり、サウンドはさらに、フリージャズ、ファンクをベースにやダヴ、インダストリアル、現代音楽的な要素を取り入れた実験色の強い混沌としたサウンドに変貌しており、The Pop Groupの影響を色濃く伺わせる。A1.「Maximum Sexual Joy」のようなファンク・ナンバーからA2.以降のThe Pop Group風あり、インダストリアルあり、フリー・ジャズ風ありと一言では到底言い表せないサウンドが詰まった大傑作。このアルバムが彼らのオリジナルとしては結局ラスト・アルバムになってしまうがThe Pop Groupよりボーカルが入っていない分、こちらの方がよりその攻撃的サウンドが楽しめるし、個人的にはこちらの方が好みである。


《Track List》
A1.Maximal Sexual Joy
A2.This Is Your Vendetta
A3.Seven Days
A4.Electric Church
A5.Nine Months To The Disco
B1.Promised Land
B2.The Tea Master And The Assassin
B3.Free Dem Cells
B4.Dinosaur Disco Meets The Swampsstomp
B5.Conscience
B6.Slim
B7.Shake (The Foundations)


13 November 2013

The Pop Group ‎– For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder? [LP/Rough Trade ‎ROUGH 9 1980 UK]

1stアルバム「Y」でセンセーショナルなデビューを飾った、英国ブリストル出身のPost-Punkグループ、The Pop Groupの1980年にRough Tradeからリリースされた2ndアルバム。これが彼らのオリジナル・アルバムとしてはラスト・アルバムになる。このアルバムの録音前にベーシストのSimon Underwoodは脱退。入れ替わりにGlaxo Babies(グラクソ・ベイビーズ)のメンバーだったDan Katsisが加入する。ジプシーの子供が口づけをしているという衝撃的なレコード・ジャケットはAndre Kertesz が1917年に撮影した物。このアルバムにはアメリカのラップ・グループThe Last Poets(ラスト・ポエッツ)とのコラボレーション曲「One Out Of Many」も含まれている。「For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?= 我々はこの先どれほど大量殺戮を見逃し続けるのか?」と題されたアルバムはそのタイトルが象徴するように、楽曲だけではなく、初回プレスのジャケットには世界各地の大量虐殺の事例やIRAの少年兵士、さらに軍隊の侵している犯罪行為の写真がコラージュされたパンフレットが挿入されるなど、彼らは過激な政治的メッセージを表明していた。さて、音の方は1stアルバムで見られたような、ファンク、ジャズ、レゲエ、ダブ、パンクなどが渾然一体としたサウンドが怒濤のように繰り広げられるが、この2ndアルバムではよりリズム隊が強化され、よりファンキーで明快なサウンドが提示されている。一方、Mark Stewartのボーカルはほとんどアジテーションと呼べるもので、抑えきれない衝動を叩きつけている感じだ。歌詞には国名などの固有名詞が次々と出てきて、政治的で強烈な告発がなされている。だが、この過激な政治的姿勢を取り続けるリーダーのMark Stewartに対して、他のメンバーは嫌気がさし始め、次第にグループ間に軋轢が生じるようになる。それでも、そういう状況下で収録されたこのアルバムは、楽器がぶつかり合う様な異常なテンションの高さで演奏されており、バンド間の緊張関係がそのままサウンドになって表れた、爆発度においては1stを凌駕した傑作。結局、このアルバムがリリースされる頃にはバンドは崩壊しており、解散状態の中でデモやライブを収録した編集盤の「We Are Time」をリリースを最後にバンドは正式に解散する。このテンションの高さ故にバンドは長く続かなかったが、彼らが残した攻撃的で混沌としたサウンドは、現在においても古さを感じないし、彼らが後生のバンドへ与えた影響は決して小さくない。


 《Track List》
A1.Forces Of Oppression
A2.Feed The Hungry
A3.One Out Of Many
A4.Blind Faith
A5.How Much Longer
B1.Justice
B2.There Are No Spectators
B3.Communicate
B4.Rob A Bank