30 August 2013

Deutsch Amerikanische Freundschaft ‎– Der Räuber Und Der Prinz / Tanz Mit Mir [7"EP/Mute ‎MUTE 011 1981 UK]

D.A.F.の「Der Räuber Und Der Prinz / Tanz Mit Mir」は 1981年英国Muteからリリースされた両サイドA面扱いの2ndシングル。D.A.Fにとっては、Muteからリリースする最後の作品であり、このシングルをレコーディングする段階では、バンド自体は方向性の違いから分裂状態で、サウンドも4人編成のバンドから2人組のデュオになっていく変遷過程を見る事が出来る興味深い作品。この2曲は、実際には新作ではなく4人編成の頃からライブで演奏されていた曲である。レコーディング段階では、エレクトロニクスを担当していたChrislo Hassは既に脱退しており、クレジットから名前を外されている。ただ、この2曲は聴く限りは新たなバージョンを作ってレコーディングした訳ではなく、その音からして、おそらくシンセ・ベースのバックトラックはChrislo Hassの作ったものをそのまま使用していると見られる。さて、AA面の「Tanz Mit Mir」だが、この曲はライブでは"Verschwende deine jugend"とクレジットされている曲で、4thアルバム「Gold Und Liebe」に収録されている"Verschwende deine jugend"とは完全に別物である。この曲のレコーディング段階では、Chrislo Hassは脱退していたが、ギターのWolfgang Spelmansは、まだ脱退前でレコーディングには参加しており、彼の名前は正式にクレジットされている。この曲はD.A.F.のベストからも外されて、地味な扱いだが、Chrislo Hassの反復するアシッドなシンセをベースに、Robert Görlのハンマー・ビート、そして、不協和音を醸し出すWolfgang Spelmansのノイジーなギターが今までのどの曲よりも搔き鳴らされ、Gabi Delcadoのボーカルスタイルも後期DAFのボディ・ミュージック3部作のような強迫的なボーカルになっており、前期DAFと後期DAFを足したような様なディスコ・パンク・サウンドで破壊力のある強力なトラックである。しかし、残念ながらWolfgang Spelmansは、このレコーディングを最後に脱退してしまう。一方、A面の「Der Räuber Und Der Prinz」も上記で紹介した通り、初期のライブでも演奏されていた楽曲で、このシングルは、Gabi DelcadoとRobert Görlの2人組バージョンで新たにレコーディングされた物である。因にこの楽曲は、Virgin移籍後の3rdアルバム「Alles Ist Gut」にも収録されている。このシングルは、やはりAA面の「Tanz Mit Mir」が聴き所であろう。この曲なら、前期DAFの好きな方も、後期DAFの好きな方でもどちらの方にも大推薦の曲である。尚、この曲は2007年に発売されたMuteのコンピレーション・アルバム10枚組CDMute Audio Documents «1978 - 1984»」で聴くことが出来る。


《Track List》
A.Der Räuber Und Der Prinz
AA.Tanz Mit Mir


22 August 2013

You've Got Foetus On Your Breath ‎– Ache [LP/Self Immolation ‎– WOMB OYBL 2 1982 UK]

本名J.G. Thirlwellことオーストラリア・メルボルン出身のJim Foetusの1982年に自身のレーベルSelf Immolationからリリースした"You've Got Foetus On Your Breath"名義の2ndアルバム。アルバム・ジャケットは1stアルバムに続いて、彼のお得意のロシア構成主義的なアートワークを用いて、わずか1500枚限定で発売された。その為、当時は、1stアルバム同様に入手困難で、稀に見かけてもとんでもない高値で売られていた。1997年に米国のレーベルThirst Earから限定4000枚でCDが再発され、一般的に出回る様になった。さて、音の方は、基本的にはジャズ、ファンク、ラウンジ、フリー・ミュージックをミックスし、ジャンク・ノイズなどのインダストリアルなフレーバーを加味した1stアルバム「Deaf」の延長線上で、雑多なジャンルを手当たり次第に放り込むのがFoetusの持ち味だが、アイデアに関して彼は、インタビューで「いかにもショービズ風のビッグ・バンド的なものは、60年代の安っぽいバラエティ番組がヒントになっている。」と語っている。また、前作同様、綿密に練ったアレンジに加え、曲調もポップ度が上がって聴きやすくなっているし、前作に較べレコーディング技術が熟れてきたのか、チープではあるが1stよりは音に力強さが感じられる。前作は実験色が強く、The Pop Groupのインダストリアル版的サウンドであったが、この2ndはよりキッチュでコミカルな部分が強調され、さながらMadnessのインダストリアル版の様で、さらに独特のダミ声で唄うFoetus節も健在である。また、西ドイツのベルリンでのライブを観て、衝撃を受けたというEinstürzende Neubautenの影響か、メタル・ジャンクなパーカッションの使用頻度も増え、次作の傑作アルバム「Hole」に繋がるサウンドも垣間見せている。この時点では、まだ「Hole」で見せた爆発力はには到底及ばないが、この頃すでに彼の独自のサウンドの確立を再確認させられるルーツ的な作品。このアルバムも1stの「Deaf」同様に秀逸なアートワークでコレクターに人気があり、アナログ盤LPは未だに高値安定で入手困難である。


《Track List》
A1.Dying With My Boots On
A2.J. Q. Murder
A3.Gums Bleed
A4.Mark Of The Ostracizor
A5.Exit The Man With 9 Lives
B1.Get Out Of My House
B2.Wholesome Town
B3.Whole Wheat Rolls
B4.Kid Hate Kid
B5.Instead...I Became Anenome