20 July 2013

SoliPsiK ‎– See-Saw / Chambermusik [7"EP/M Squared ‎M-2009 1981 AUS]

SPKの「See-Saw / Chambermusik」は1981年にオーストラリアのインディペンデント・レーベルM Squaredから"Solipsik"名義でリリースされた7インチ・シングル。このシングルはシドニーでオリジナル・メンバーNeil Hillを中心にレコーディングされ、もう一人のオリジナル・メンバーであるGreame Revellは当時、Neil Hillと仲違いして渡英しており、参加していない。それはオーストラリアのFM局JJJのDJを介して、SPKの存在を知り、彼らのシングルを聴いて気に入った英国のIndustrial Records主宰でThrobbing GristreのリーダーであるGenesis P.Orridgeから英国での活動のオファーを受け、Greame Revellは渡英を快諾したが、一方のNeil Hillはオーストラリアに残る事を選択し、英国行きを拒否して2人が対立したからだ。結果、Greame Revellは別のメンバーと"SPK"を結成して渡英し、Neil Hillはオーストラリアに残って"SPK"を続けていた為、一時期はオーストラリアと英国に2つの"SPK"が存在した。依ってこのシングルは分裂期のNeil Hillが率いる"SPK"の作品である。初期のシングル録音時のメンバーのDanny Rumour、David Virgin、Karmel.E.Klasticは、既に脱退しており、Neil Hillの妻のMargaret Hillも含む新メンバーでのレコーディングとなっている。さて、音の方だが「See Saw」は初期シングルのエレクトロニクス・ノイズ・パンク的サウンドからノイズはかなり抑えられており、またNeil Hillが親日家だった為か日本の軍歌の様なフレーズもフューチャーされている。ボーカルもパンクっぽい荒々しさが薄れていて初期の彼らの代表曲「Slogun」などと比べるとインパクトにやや欠けるかもしれない。しかし、「Chambermusik」ではボーカルこそ大人しくなっているが、凄まじいエレクトロニクス・ノイズを放射した本領発揮と言うべきサウンドを聴く事ができる。尚、この「Chambermusik」は、Greame Revellが英国からオーストラリアに戻って、再度Neil Hillと組んで制作したS.P.K.の2ndアルバム「Leichenschrei」に再録音して収録されている。Neil Hillが単独で率いたSPKの作品としてリリースしたのは、このシングル1枚であるが、このシングルをリリースしたM Squaredレーベルのコンピーレション・アルバム「A Selection」に未発表曲の貴重な音源「Zombod」が収録されている。


《Personel》
Neil Hill  (aka Skorne) - synthesizer, drum programming, bass,effects
Margaret Hill (aka Suishi) - voice
Paul Charlier (aka Charlyiev) - bass, synthesizer , voice
Kit Katalog (aka Kitka) - vocals

《Track List》
A.See-Saw
B.Chambermusik

17 July 2013

Deutsch Amerikanische Freundschaft ‎– Kebabträume / Gewalt [7"EP/Mute ‎MUTE 005 1980 UK]

D.A.F.の1980年に英国のMute Recordsからリリースされた1stシングル。このシングルはMuteからの2ndアルバム「Die Kleinen Und Die Bösen」の前に発表された作品で、2ndアルバム録音前には脱退していた初期のメンバー、Michael Kemner(b)もクレジットされており、Gabi Delgado(vo)、Robert Görl(ds)、Wolfgang Spelmans(g)、Chrislo Haas(synth)の5人編成時代に英国のCargo Studiosで録音されている。因にベーシストのMichael Kemnerは後に同じくD.A.F.を脱退するギタリストのWolfgang Spelmansとパンク・バンド"Mau Mau"を結成している。タイトル曲「Kebabträume」はGabi DelgadoがD.A.F.以前に在籍していたパンク・バンド"Mittagspause"時代に書かれた「Militurk」がオリジナルであり、また、D.A.F.の5thアルバム「Für Immer」にも収録されているが、アレンジはまったくの別物である。さて、音の方はこの時期、このメンバーで録った曲だけに基本的には2ndアルバム「Die Kleinen Und Die Bösen」の頃の音である。つまり、Chrislo Haasの作った反復するアシッドなシンセをベースにRobert Görlのハンマー・ビート、Wolfgang Spelmansのフランジャーの掛かったノイジーなギターと、2人組D.A.F.のダンサブルなアレンジとは違い、エレクトロ・パンクなアレンジを聴く事が出来る。ボーカルのGabi Delgadoはこの曲でも2ndアルバム同様に甲高い声で歌っていて、Virginからリリースされる3rd以降での男臭いボーカルが別人の様だ。一方、B.sideの「Gewalt」は2ndアルバムにライブバージョンで収録されていた曲で、今回はそのスタジオバージョン。A.sideの「Kebabträume」とは打って変わって「Gewalt = 暴力」のタイトル通りの吐き出す様なGabi Delgadoのボーカルが印象的。スピーディでタイトなリズムに異様な電子ノイズと荒々しくノイジーなギター・サウンドが炸裂するエレクトロ・パンク・チューンで、初期のD.A.F.はパンク・バンドだと再認識させられる作品でD.A.F.の歴史を知る上でも重要な1枚。尚、このシングルの2曲はMuteから2007年にリリースされたコンピレーションの10枚組CDアルバム「Mute Audio Documents «1978 - 1984»」で聴く事が出来る。


《Track List》
A.Kebabträume
B.Gewalt


4 July 2013

New Order ‎– Ceremony [12"EP/Factory FAC 33/12 1981 UK]

New Order (ニュー・オーダー)は1980年の5月に成功を期待されたJoy division (ジョイ・ディヴィジョン)のアメリカ・ツアー出発前日の18日にボーカルでフロントマンであるIan Curtisが自殺するという悲劇が起こり、残されたメンバーのBernard Sumner (vo, g)、Peter Hook (b)、Steven Morris (ds)の3人がJoy Divisionから名称を変えて再スタートしたバンドである。後にSteven Morris のガール・フレンドの Gillian Gilbert (g, key)が正式に加わり4人組となる。この「Ceremony」はNew Orderの1stシングルだが、この曲自体はJoy Division時代に書かれた作品であり、Ian Curtisもクレジットされている。因みにこの曲のオリジナルはJoy Divisionの未発表曲とIan Curtisのバーミンガム大学でのラスト・ライブを収めた編集版アルバム「Still」ではライブ・バージョン、これも編集版でCD4枚組Boxの「Heart And Soul」ではデモ・バージョンを聴くことが出来る。この残された曲をレコーディングするのにIan Curtisが書いたオリジナルの歌詞が残っていなかった為、Bernard Sumnerが録音状態が良くないデモ・バージョンのテープをグラフィック・イコライザーに掛けながら歌詞を起こしたり、ボーカルを誰にするかなど試行錯誤がかなりあったようだ。そして、1980年のキャンセルとなっていた5月のアメリカ・ツアーの代行ライブを9月にNew Orderとして敢行するがその際にニュージャージー州のスタジオでMartin Hannettプロデュースによって「Ceremony」とB面になる「In A Lonely Place」の2曲がシングルとして正式にレコーディングされる。このレコーディングはオリジナルメンバーの3人で行われ、この3人バージョンは1981年1月に7インチ(ブロンズに型押しの文字のジャケット)、3月に12インチ(ダーク・グリーンにゴールドの文字のジャケット)でリリースされ、その後、Gillian Gilberがメンバーに加わった為、「Ceremony」の4人バージョンを10月に彼らの地元マンチェスターで再レコーディングし、この4人バージョンは1981年7月に12インチ(アイボリーとブルーのツートーンのジャケット)で再リリースされている。この曲のサウンド自体はまだJoy Division色が色濃く残っているが、「Love Will Tear Us Apart」に匹敵する名曲でリード・ボーカルをBernard Sumnerが務めて、あまり上手くはないが繊細なボーカルを披露し、ベースのPeter Hookは高音域を強調したベース・プレイで曲をリードし、その後のNew Orderサウンドへ繋がる部分も垣間見せている。尚、この曲は後にNew Orderの1987年リリースのシングル集「Substance」に4人組バージョンが収録され、3人バージョンは2005年の「Singles」に収録されている。どちらのバージョンも甲乙付けがたいが、個人的にはリズムがクリアになり、スッキリ録られた4人バージョンより、ややノイジーでラフな感じに録られた3人バージョンが気に入っている。


《Track List》
A.Ceremony
B.In A Lonely Place