17 August 2008

The Durutti Column - The Return Of The Durutti Column 〔LP/Factory FACT14 1979 UK〕

The Durutti Column(ザ・ドゥルッティ・コラム)は1977年英国マンチェスターで3人編成のNosebleedsというパンク・バンドでギターを弾いていたVini Reillyがソロになって始めたプロジェクト。因みにDurutti Columnは1930年代のスペイン市民戦争時の市民部隊の名前である。マンチェスターでFactory Recordsを立ち上げたばかりのTony Willsonに気に入られ、レーベル初のレコードリリースとなるコンピレーション7"×2枚組の「A Factory Sample」に2曲提供している。このアルバムはFactory Recordsから1979年発表されたデビューアルバム。写真のベージュのサンドペーパーのジャケットは初回盤2000部限定でFactoryのオフィスで社長のTony WilsonとJoy DivisionのIan Cirtisらが手伝って一枚一枚丁寧に糊でサンドペーパーを貼って作られた。このジャケットはTony WilsonのアイデアでSituationist(状況主義者)からヒント(彼らはサンドペーパーを使用した本を出そうとし、本棚に置いて他の本を破壊する)を得たらしい。つまりこのレコードが一緒に並ぶ他のレコードを破壊させるわけだ。さて、音の方だが過激なジャケットとは裏腹にシンセサイザー、リズムボックスに空間的な広がりを感じさせる漂うようなギターが淡々と紡がれるインストゥルメンタル。プロデューサーのMartin Hannettがムーグのシンセから出した小鳥のさえずりを思わせる音を聴いて自然とできたという「Sketch Of Summer」は初期の名曲だ。尚、1996年リリースCDバージョンはオリジナル9曲の加え、初回盤のみの収録だったMartin HannettのFlexi Discの2曲、自殺したJoy DivisionのIan Cartisへ捧げられたというシングル「Lips That World Kiss」などがBonus Trackで追加され計15曲になっている。


《Track List》
A1.Sketch For Summer (3:01)
A2.Requiem For A Father (5:08)
A3.Katherine (5:30)
A4.Conduct (5:02)
B1.Beginning (2:28)
B2.Jazz (1:35)
B3.Sketch For Winter (2:25)
B4.Collette (2:23)
B5.In 'D' (2:25)

《FLEXI DISC》 (初回盤のみ収録)
A.First Aspect Of The Same Thing /Martin Hannett (3:42)
B.Second Aspect Of The Same Thing /Martin Hannett (2:59)

15 August 2008

The Human League - Reproduction [LP/ Virgin V2133 1979 UK]

The Human League(ザ・ヒューマン・リーグ)は1977年英国の工業都市シェフィールドでKraftWerkに衝撃を受けたMartin Were、Ian Graig Marsh、Philip Oakeyらで結成された。バンド結成当初はThe Future(ザ・フューチャー)として活動していて後にClock DVAを結成したAdi Newtonも初期メンバーだった。その後スライドフィルム担当のAdrian Wrightが加わり、(Adi Newtonは脱退)The Human Leaugeに改名し活動する。彼らはデモテープを幾つかのレーベルに送り、その結果エジンバラのインディーズレーベルFast Recordsからでデビューすること事になる。その後Siouxsie & Bansheesのツアーのオープニングアクトを務めるなど、知名度が上がった彼らをメジャーレーベルVergin Recordsが獲得に乗り出した。このアルバムは1979年Verginからリリースされたデビューアルバム。音の方は全面にエレクトロニクスをフューチャーしたエレクトロ・ポップ的な面もあるが同じ工業都市シェフィールド出身のCabaret Voltaireの影響もあって所々にインダストリアル的な要素も顔を出す。彼ら自身は結成当時ポップ・バンドの意識などはなく、ギターを持たないパンク・バンドの意識で活動していた。ゆえに曲は粗削りで実験的なものが多く、ボーカルの入っていない曲などはまさにインダストリアルサウンドだし、この頃の彼らはまさにエレクトロニクスで武装したパンクだ。後のポップなThe Human Leagueのイメージで聴くとかなりノイジーでショックを受けると思う。尚、CDヴァージョンは8曲がBonus Trackで追加されている。


《Track List》
A1.Almost Medieval (4:34)
A2.Circus Of Death (3:51)
A3.The Path Of Least Resistance (3:27)
A4.Blind Youth (3:16)
A5.The Word Before Last (3:56)
A6.Empire State Human (3:10)
B1.Morale...
B2.You've Lost That Loving Feeling (9:30)
B3.Austerity/Girl One (Medley) (6:38)
B4.Zero As A Limit (4:01)

14 August 2008

Thomas Leer & Robert Rental - The Bridge [LP/Industrial IR0007 1979 UK]

1979年Throbbing Gristlle主宰のIndustrial Recordsからリリースされた多重録音のパイオニア的存在のThomas LeerとThe Nomal名義で「Warmleatherette / T.V.O.D」をヒットさせたMute Recoeds社長のDaniel Millerとの共演で知られるスコットランドの電子音響アーティスト、Robert Rentalとの共作のアルバム。わずか2週間で制作されたという8トラックの宅録作品。もともと彼らはパンクムーブメントの時にスコットランドからロンドンに出てきた友人同士でシングルの作成時も機材を共同で借り、それぞれのフラットで 録音していた。このアルバムのリリースに関してIndustrial Recordsは二人の音楽性とそれぞれの自主レーベルからD.I.Y精神に溢れる素晴らしいシングルを発表していることから、そんな二人を手助けしたいとの理由からだった。さて、音の方はチープなシンセとノイジーなギターが絡むインダストリアル風エレ・ポップでボーカルサイドのA.sideとThrobbing GristlleやCabaret Voltaireを彷彿とさせるインダストリアル・ノイズでオール・インストゥルメンタルサイドのB.side。といっても決してThrobbing Gristlleのような強迫的なノイズではないが冷蔵庫や家電製品の発生するノイズを使用したり、機材もThrobbing Gristlleから借り受けたこともあって非常に似通ったサウンドになっている。現在の基準で言えば、当時の機材の限界もあり非常にチープな印象も受けるのだが、それでも彼らのアイデアとD.I.Y精神が詰まった傑作だと思うし、テクノサウンドが好きな人には是非聴いてもらいたい作品である。特にIndustrial Recordのコンピレーションアルバム「The Industrial Records Story」でも取り上げられたA3.「Day Breaks Night Heals」は名曲だ。尚、Robert Rental氏は2005年2月に肺癌で他界されている。

《Track List》
A1.Attack Decay
A2.Monochrome Days
A3.Day Breaks, Night Heals
A4.Connotations
A5.Fade Away
B1.Interferon
B2.Six A.M.
B3.The Hard Way In & The Easy Way Out
B4.Perpetual


13 August 2008

Deutsch Amerikanische Freundschaft - Produkt Der Deutsch Amerikanische Freundschaft [LP/ATA TAK WR01 1979 GER]

Deutsch Amerikanische Freundschaft(ドイッチェ・アメリカニシェ・フロイントシャフト=独米友好)は、1978年にRobert Görl (drums)、Gabi Delgado Lopez (text, vocals)、Wolfgang Spelmans (gaiter)を中心に当時、西ドイツのデュッセルドルフで結成される。このアルバムはAta Takレーベルから1979年発表の1stアルバム。だがこの頃の初期段階のD.A.F.は英国のMute Recordsから2ndアルバム「Die Kleinen Und Die Bösen」を発表するまではメンバーが固定しておらず、セッション的音楽工房であった。Der PlanのPyrolater(ピロレイター)やZensor Records (ツェンゾオ・レコーズ)主宰のFrieder Butzmannも元D.A.F.の一員だ。このアルバムだが1stアルバムではあるが、Gabiのヴォーカルは入ってないし、曲の構成もほとんどなくフリー・ジャズ・セッションの様な演奏で短い曲がフェイドイン~フェイドアウトで連続する曲はタイトル無しの22曲でほとんどデモ・テープのような粗っぽさ。ほとんどスタジオライブ的サウンドではあるがかなり迫力と異様な緊張感がある。ノイジーなシンセやベース、リズムが詰んのめり気味のGörl のドラム、そしてSpelmansの発狂のノイジーなギターが絡んでと、かなりキレていて初期のD.A.F.はパンクバンドだったんだなと感じさせる実験的かつバイオレントな一枚。ただ後期('81-'82)の2人組のボディ・ミュージック3部作の頃のD.A.F.が好きな人にはあまり薦められないが彼らの歴史を知る意味では重要な作品。機械の上で踊るバレリーナと黄色でまとめたジャケットが前衛的でカッコイイ。


Jean Jacques Burnel - Euroman Cometh [LP/United Artists Records UAG30214 1979 UK]

英国のパンクバンドThe Stranglers(ザ・ストラングラーズ)のベーシストJean Jacques Burnel(ジャン・ジャック・バーネル)の1979年発表のソロアルバム。彼は名前から分かる様に英国生まれのフランス人である。彼がフランス人だからなのか、タイトルの「Euroman Cometh」を意識したのかは不明だがフランスのパリにあるPompidow Center (ポンピドー・センター)を背景にしたジャケットがとにかく素晴らしく、思わずジャケ買いしてしまった1枚。演奏はベースだけではなくほとんどの楽器は彼自身が演奏し、多重録音で収録されているようだ。聴く前のサウンドのイメージはジャケットの写真からインダストリアルや、あるいはバリバリのテクノサウンドを想像させるが、音の方は想像とはちょっと違いパンクバンドのベーシストらしくパンクっぽいゴリゴリしたベースにチープなリズムボックス、シンセサイザー、ノイジーなギターやエフェクターが掛かったボーカルが絡むといった若干テクノの雰囲気も漂うオルタナティブなパンクサウンド。ボーカルもフランス語やドイツ語で歌う曲もあり、欧州統一を意識したものになっている。感想としては当時リアルタイムで聴いたならば、それなりのインパクトはあったのだろうが、正直、同時期のP.I.L.やThe Pop Groupなどの他のPost-Punkのアーティストと較べてしまうと少々こじんまりしている感は否めない。ただ、1998年にリリースされたCDはオリジナルに1曲を加えて、Liveヴァーションを10曲追加して再発されているが、このLiveバージョンはスタジオバージョンよりもかなりアグレッシブでパワフルな演奏が聴かれ、こちらの方が数段いいと思う。


《Track List》
A1.Euroman
A2.Jellyfish
A3.Freddie Laker (Concorde & Eurobus)
A4.Euromess
A5.Deutschland Nicht Über Alles
B1.Do The European
B2.Tout Comprendre
B3.Triumph (Of The Good City)
B4.Pretty Face
B5.Crabs
B6.Eurospeed (Your Own Speed)

Gang Of Four - Entertaiment! [LP/EMI EMC3313 1979 UK]

Gang Of Four(ギャング・オブ・フォー)は1977年英国の都市ヨークシャーのリーズでAndi Gill (gaiter)、John King (vocals)、Dave Allen (bass)、Hugo Burnham (drums)のリーズ大学に通う学生4人で結成されたPost-Punkバンド。バンド名は権力闘争に明け暮れた悪名高き中国の「4人組」に由来する。1978年にFast Recordsから1stシングル「Dameged Goods」でデビュー。このシングルがインディー・チャートNo.1に輝き、メジャー最大手のEMIと契約する。このバンドの中心となったのはギターのAndi Gillで彼の特徴であるメロディを廃し、徹頭徹尾リズムカッティングにこだわったドライなプレイがバンドの最大の特徴でもあった。1979年に発表されたの1stアルバム「Entertament!」は当時のP.I.L.やThe Pop Group、Joy Divisionなどの作品と並ぶPost-Punkの最高傑作で全英ヒットチャート45位のヒットとなった。音の方はメタリックでサイケデリックな色と微妙なファンク色を感じさせる鋭い硬質なギター、そこに力強いベースとドラムが加わり独特のうねりを作り出している。エフェクトをほとんど掛けないデモ・テープのようなシンプルな録音ゆえ、かえって異様な程の緊張感と生々しさを生んでいるし、今聴いてもかなり新鮮だ。やはりAndi Gillのギタープレイは出色だ。尚、1995年リリースのCDバージョンは1980年12インチシングル「Gang Of Four」から3曲がBounus Trackで追加されている。


《Track List》
A1.Ether (3:50)
A2.Natural's Not In It (3:07)
A3.Not Great Men (3:05)
A4.Damaged Goods (3:27)
A5.Return The Gift (3:02)
A6.Guns Before Butter (3:48)
B1.I Found That Essence Rare (3:07)
B2.Glass (2:28)
B3.Contract (2:41)
B4.At Home (He's A Tourist) (3:33)
B5.5.45 (3:43)
B6.Love Like Anthrax (4:20)

12 August 2008

Cabaret Voltaire - Mix Up [LP/Rough Trade ROUGH4 1979 UK]

Cabaret Voltaire(キャバレー・ヴォルテール)は1973年英国の工業都市シェフィールドでChris Watson、Richerd H.Kirk、Stephen Mallinderの3人で結成された。バンド名は19世紀初頭のダダイストの拠点、スイス・チューリッヒのカフェに由来する。同時期に現れたThrobbing Gristlleと並ぶインダストリアル・ノイズの雄であり、かつ後のテクノ・ミュージックに多大な影響を与えたバンドである。彼らの元々の活動は趣味の一環であるWilliam.S.Burroughsに「カットアップ」のテクニックにインスパイアされたアイデアに従い様々なフィールドワークから採取した音や短波ラジオ、エレクトロニクス・ノイズなどのサウンドコラージュしたホーム・テーピングを作ることからスタートした。そして、そのテープループを車で走らせながら街中で放送したり、テープレコーダーを持ち込んでパブで異様な音を出したり、彼ら曰くイカレタ遊びをしていた。そして彼らは1975年の5月にロックバンドと偽って出演したライブイベントでは、彼らの演奏と蒸気ハンマー音のテープ・ループをパーカッションにしたという異様な音は全く受け入れられず、オーディエンスから力ずくで阻止された。彼らの転機は1976年のパンクムーブメントの到来でようやく彼らの様な実験的音楽も認められるようになる。そして1978年にRough Tradeからリリースされたデビューシングル「Extended Play」でヒットを飛ばした彼らはさらに「Nag,Nag,Nag」などのシングルも好セールスを記録するなどRough Tradeでの位置を不動の物にする。 さて、このアルバムはRough Tradeからリリースされた1979年発表の彼らの1stアルバム。ベース、ギター、エレクトロニクス、リズムマシーン、テープ、ヴォーカルなどを様々なエフェクトを掛けて使用し作られた陰鬱なノイズはサンプリングマシーンなどない当時の機材の制約もあって音自体はシンプルかつ非常に生々しい音になっている。様々なノイズの要素から触発されたサウンドだが非常にリズムを重点においているので緩慢なリズムパターンではあるが、この手の音楽としては取っ付きやすい音だ。

《Track List》
A1.Kirlian Photograph (5:32)
A2.No Escape (3:34)
A3.Fourth Shot (3:57)
A4.Heaven And Hell (5:45)
A5.Eyeless Sight (Recorded Live 79) (3:12)
B1.Photophobia (5:49)
B2.On Every Other Street (4:01)
B3.Expect Nothing (6:05)
B4.Capsules (4:04)

11 August 2008

Throbbing Gristle - 20 Jazz Funk Greats [LP/Industrial IR0008 1979 UK]

1975年に英国のキングストンでパフォーマーのGenesis P-Orrigeを中心にヌードモデル出身の仲間Cosey Fanni Tutti、著名なアートワーク集団ヒプノシスの一人Peter Christopherson、エレクトロニクス機器をまとめる音楽家Chris Carterと結成したアート集団がThrobbing Gristle (スロッビング・グリッスル)。このThrobbing Gristleが掲げたスローガン「Music From Death Factry(死の工場からの音楽)」や「Industrial Music For Industrial People(産業人間のための産業音楽)」をもとに作られた彼らの音楽がそのまま「Industrial Music = インダストリアル・ミュージック」と呼ばれた。つまり彼らが所謂"Industrial Music"の創設者なのだ。彼らは自身のレーベルIndustrial Recordsから作品を発表し、入念に仕込まれた過激なメッセージ性と優れたアートワークで大きな影響を与え、インダストリアル・ミュージックをコンセプトとしたというサウンドは、エレクトロニクスの反復ビートをベースに歪んだギターノイズ、テ-プ・コラージュ、ノイズ的にコラージュされるSEなどにジェネシスの呪文のようなヴォイスなど、所謂インダストリアル・ミュージックの雛形を造った。このThrobbing Gristleに端を発したインダストリアル・ミュージックは無秩序、無統制な増殖と勝手気ままな転移を繰り返しアッという間に全世界に広がってしまった。その旺盛な増殖能と既存の音楽作品との異型性も含めて、インダストリアル・ミュージックはあたかも音楽シーンの悪性腫瘍と呼んで然るべきものだろう。さて、この「20 Jazz Funk Greats」は彼らの1979年発表の3rdアルバム。安易な流通商品をとしてのベスト・アルバムを皮肉ったタイトルを付け、一見ポップな感じに見えるジャケットの写真の背景は実は自殺の名所の岬だったらしい。彼ららしい悪趣味なパロディだ。さて、音の方は彼ら独自の毒性を感じさせながらも、ポップな要素がかなり盛り込まれたThrobbig Gristleの中で最も聴きやすいアルバム。特にB1.の「Hot On The Heels Of Love」はDJ ヘルにカバーをされるなどTechno方面からの評価も高い名曲。尚、1991年からリリースされたCDにはボーナストラックとして、1981年に12"シングルでリリースされた「Disipilne」が追加収録されているが、このシングルはスタジオ録音ではなくマンチェスターとベルリンのLiveで収録したものである。


《Track List》
A1.20 Jazz Funk Greats (2:44)
A2.Beachy Head (3:37)
A3.Still Walking (4:44)
A4.Tanith (2:12)
A5.Convincing People (4:48)
A6.Exotica (2:50)
B1.Hot On The Heels Of Love (4:20)
B2.Persuasion (6:34)
B3.Walkabout (3:00)
B4.What A Day (4:35)
B5.Six Six Sixties (2:64)

10 August 2008

This Heat - This Heat [LP/Piano THIS 1 1979 UK]

This Heatは元Quiet Sunのドラマーとして活動していたCharls Hayward(drums)が、実兄のCharles Bullen(guitar)、Gareth Williams(bass)と共に1976年に英国のブリクストンで結成した、伝説のオルタナティヴ・ユニット3人組。1977年初頭にBBCのラジオDJのJohn Peelによってデモテープが流され、これがバンド初のラジオ出演だった。デモテープはキャンバーウェルのHaywardの実家で録音された。その出演がきっかけでその名前が知れ渡るようになる。このアルバム「This Heat」はFlying LizardsのDavid Cunninghamの共同プロデュースによる1979年のデビュー作でPiano Recordsからリリースされた。1976年の結成時から取り貯めした膨大な録音テープを流しながら、それに即興的に共演する形で演奏する手法の彼らの音楽はフリー・ジャズ、あるいはノイズミュージックともつかない破壊的なものでロックの破壊、解体の意思を強く感じさせる。また、巨大な録音空間そのものを楽器として使った音響処理も斬新な印象を与えている。ブリクストンの食肉冷凍倉庫の中で黙々と恐るべきテンションで繰り広げられた音響破壊工作プロジェクト。このアルバムは永らく廃盤になっていて入手が非常に困難だったが、2006年にCDが再発されている。尚、このアルバムを聴く時の注意だが、A1.Testcardは極端にボリュームを絞って録音している為、あれっ、音小さいなとむやみにボリュームを上げない事。A2.のHorizontal Holdが始まった途端に音が爆裂します。A2.Horizontal Hold、A6.24 Track Loopがお勧め。


《Track List》
A1.Testcard (0:47)
A2.Horizontal Hold (6:55)
A3.Not Waving (7:25)
A4.Water (3:10)
A5.Twilight Furniture (5:11)
A6.24 Track Loop (5:56)
B1.Diet Of Worms (3:08)
B2.Music Like Escaping Gas (3:40)
B3.Rainforest (2:54)
B4.The Fall Of Saigon (5:09)
B5.Testcard (4:09)


Public Imge Limitd - Metal Box [12"×3/Vergin METAL 1 1979 UK]


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Public Imege Limited(PIL)は1978年に「ロックは死んだ」と宣言しSex Pistolsを突如脱退したJohnny RottenことJohn Lydon(vocals)が、Keith Levene(guitar)、Jah Wooble(bass)らと結成されたPost-Punkバンド。1978年にデビューアルバム「Public Imege」をリリース。このアルバムは全英チャート22位となるヒットになった。そして、1979年にリリースされたのが2ndアルバム「Metal Box」だ。音質にこだわったJohn Lydonのアイデアで45rpm12インチ・アナログ盤3枚組をアルバムタイトル名通り金属缶に納めた初回限定5万セットで発売。このアイデアに関しては、実はFactory Recordsの社長Tony Wilsonも密かに考えていたらしい。結局のところ実現したのはPILの方で採算など度外視したこのアイデアの費用はバンドが受け持った。(Second Editionはノーマルジャケット33rpmに変更)さて、音の方はレゲエ、ダブの流れから超重厚なJohn Wardleのベース音を軸にフリーキーなJohn Lydonの病的ヴォーカル、それにKeith Leveneのエキセントリックなギターリフが絡むカオティックな空間が広がるダウナーなサウンド。ジャマイカのサウンドシステムからのへヴィービートやダブ、CAN、Neu!などのクラウトロック的なリズムアプローチをヒントにしたものと思われるどれも見事に組み合わされたPILの最高傑作アルバム。自ら作ったパンクの流れを強制終了させ、パンク以降のサウンドを自ら見事に提示した。個人的にはA1.Albatross、B2.SwanLake、C1.Poptones、C2.CareeringがRecommend。


《Track List》
A1.Albatross (10:32)
B1.Memories (5:05)
B2.Swan Lake (4:19)
C1.Poptones (7:45)
C2.Careering (4:32)
D1.No Birds (4:43)
D2.Graveyard (3:07)
E1.The Suit (3:29)
E2.Bad Baby (4:30)
F1. Socialist/Chant/Radio 4 (12:31)



5 August 2008

The Pop Group - Y[LP/Radar Records RAD20 1979 UK]

The Pop Groupは1977年に英国南部の都市ブリストルでMark Stewart(vocals,lyrics)を中心に、John Waddington(guitar)、Gareth Sager(guitar)、Simon Underwood(bass)、Bruce Smith(drums)の5人で結成されたのPost-Punkバンド。翌年、デビューシングル「She Is Beyond Good And Evil」を経て1979年発表された1stアルバムがこの「Y」だ。プロデューサーはレゲエ畑の大物Dennis Bovellが担当している。過激な政治的歌詞にヘヴィファンク、フリー・ジャズ、レゲエ、アフロミュージックなど様々な要素にパンクの攻撃性を持ち込んだフリーキーかつ圧倒的なパワーのサウンド。彼らがこのアルバムを発表した時点でティーンエイジャーだとはにわかには信じられないオリジナリティだ。彼らはそのテンションの高さゆえその後2年足らずで解散してしまうが、分裂後もメンバーはそれぞれバンドを組み(Rip Rig&Panic、Pigbag、Maximum Joy、Mark Stewart + Mafiaなどに枝別れした)Post-Punkシーンに影響を与え続け活動した。この30年以上前の発表のアルバムではあるが今以ってオリジナリティのあるサウンドだし、彼らが後進へ与えた影響は多大なものがある。尚、CDバージョンでは1979発表のシングル「She Is Beyond Good And Evil」が追加され、さらに2007のバージョンではこのシングルのB面にあたる「3:38」がBonus Trackとして追加になっている。


《Track List》
A1.Thief Of Fire
A2.Snowgirl
A3.Blood Money
A4.Savage Sea
A5.We Are Time
B1.Words Disobey Me
B2.Don't Call Me Pain
B3.The Boys From Brazil
B4.Don't Sell Your Dreams


4 August 2008

Joy Division - Unknown Pleasures [LP/Factory FACT10 1979 UK]

Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)は1976年、英国マンチェスターのサルフォードで結成されたPost-Punkバンド。Sex Pistolsが1976年、マンチェスターで行ったライブを観て衝撃を受けたBernard Sumner(guitar)、その同級生だったPeter Hook(bass)はその晩バンド結成を決意する。その後、そのライブで居合わせたIan Curtis(vocals)が加わり、ドラマーは固定出来ていなかったが、数名を試した後にStephen Moriss(drums)が正式にメンバーとなった。バンド名は当初はStiff Kittens(スティッフ・キトゥンズ)を名乗り、Ian Cirtisが加わった後、彼の発案でWarsaw(ワルシャワ)に改名して活動するが1978年の年明け早々にロンドン似た名前のバンドの存在を知ることとなり、バンド名はWarsawから最終的にJoy Divisionに落ち着いた。因に"Joy Division"とは第二次世界大戦中のユダヤ人女性の日記「House Of Dolls」に描かれたナチスドイツの時代の将校用の性的慰安所の名称のことである。その後、彼らは1978年6月に自主制作のシングル「An Idel For Living」を1000枚限定でリリース。そして、地元でスタートしたばかりのTony Willson率いるFactory Recordsと契約。このアルバムは、1979年6月にリリースされたJoy Divisionの記念すべき1stアルバム。FactoryのデザイナーPeter Savilleによる恒星爆発時の電磁波形をあしらい、バンド名、曲名などのクレジットを一切排除したシンプルなジャケットに初期のWARSAW時代の荒削りなパンクロックから脱皮し、Ian Curtis陰鬱な歌詞に圧倒的存在感のヴォーカル、天才プロデューサー、Martin Hannettのよるノイジーなドラムサウンドや様々なSE、クラウトロック的なハンマービートなどを取り入れたダークでデジタルな感触を伴う独自のサウンドに成功している大傑作アルバム。だがBernard Sumner、Peter Hookはこのアルバムが嫌いだったという。ライヴな録音をしてラウドなサウンドにもかかわらずのオーバープロデュースと感じたようだ。確かに彼らのライヴの音源を聴いていると、このアルバムはMartin Hannettがかなり手を加えた感じはあるが、全体にダークでクールな感触の曲調が他の同時期バンドとは一線を画しておりPost-Punkの幕開けを告げる大傑作アルバム。A1.Disorder、B1.She's Lost Control、B2.Shadowplayは名曲だ。

《Track List》
A1.Disorder (3:36)
A2.Day Of The Lords (4:43)
A3.Candidate (3:00)
A4.Insight (4:00)
A5.New Dawn Fades (4:47)
B1.She's Lost Control (3:40)
B2.Shadowplay (3:50)
B3.Wilderness (2:35)
B4.Interzone (2:10)
B5.I Remember Nothing (6:00)


2 August 2008

System Planning Korporation - Information Overload Unit [LP/Side Effects SER01 1981 UK]

S.P.K.は1978年にオーストラリアのシドニーにあったカランパーク精神病院の看護士Greame Revell (a.k.a. EMS AKS、Operator、Oblibion)とその精神病患者Ni/H/iLことNeil Hillを中心に結成された。S.P.K.の名称は彼らが当時興味を持っていた旧西ドイツのテロリストグループ「Sozialistisches Patieenten Kollektiv=社会主義患者集団」のイニシャルを取って付けられた。その後は匿名性を強調するため、S.P.K.の頭文字にした様々な名称(System Planning Korporation、Sozialistisches Patienten Kollektiv、Surgical Penis Klinik、Seppuku)でアルバムやシングルなどをリリースし、メンバー名も変名、偽名のクレジットを好んで使用した。結成翌年の1979年にEMS AKS、Ni/H/iL、Danny Rumour、David Virgin、Karmel.E.Klasticの5人でシドニーで3度のパフォーマンスを行い、同年3月にデビュー・シングル「No More/Kontakt/Germanik」を自主レーベルのSide Effektsからリリースしている。ジャーマン・ロック (Neu!、CAN、Kraftwerkなど)に影響を受けたという結成当初の彼らはインダストリアル・ノイズにパンクのアプローチを融合させた非常にアグレッシヴなサウンドを展開していた。またS.P.K.は過激なライブアクションやショッキングなレコードジャケットでそれ以降の「ノイズ」のイメージを決定的にした。Throbbing Gristle主宰のIndustrial Recordsからのシングルのジャケットは男性性器の串刺し写真に「Surgical Penis Klinik=陰茎外科病院」の「Meat Processing Section=食肉加工部門」という タイトルを付けたり、一方ライブではアメリカ公演で羊の脳を食べたり、ステージで火炎放射器を発射し、不注意にも観客の一部に火を付けてしまうなど過激なパフォーマンスと共に、ステージ上では畸形や死体解剖、性病の症例などのショッキングな映像を流していた。これらのヴィジュアルを使った意図は英国の作家J.G.Ballardの「The Atrocity Exhibition = 残虐行為展示会」の実際的な応用だった。つまり、何が、どうして人を不快にさせるのかというアイデアに基づいたものだと彼らは語っている。1981年にリリースされたこの1stアルバムはオリジナルメンバーのNe/H/iLとGreame Revellは仲違いしていた為、Ne/H/iLは不参加。この作品はGreame Revellが渡英し、System Planning Korporation名義でGreame Revellの実弟のMr.CreanことAshley Revell、Tone GeneratorことDominic Guerin、英国人のMike Wilkinsの新ラインナップでのリリース。一方でNe/H/iLはオーストラリアに残り、Solipsik名義で7インチシングル「See Saw」をリリースしていて、一時期は英国とオーストラリアに2つの"SPK"が存在したわけだ。さて音の方だがオーストラリア時代の電子ノイズパンクからは作風が驚くべき変化を遂げており、強烈な電子ノイズ、金属打撃音、テープによるコラージュ、絶叫、怒号のヴォーカルとリスナーを攻撃する凶暴な物。最後まで聴き通すには覚悟がいるだろう。特にA1.Emanation Machine R. Gie 1916の荒削りなハウリングノイズとメタルパーカッションが凄まじいA4.Berufsverbot、変則的なリズムにハウリングノイズとボイス・コラージュがフューチャーされたB4.Epilept: ConvulseがRecommend。


《Parsonnel》
Operator: synthesizers, rhythms, treatments, vocals
Wilkins: guitar, bass, tapes, vocals
Tone Generator : synthesizers, treatments
Mr. Clean: technician

《Track List》
A1.Emanation Machine R. Gie 1916
A2.Suture Obsession
A3.Macht Schrecken
A4.Berufsverbot
B1.Ground Zero: Infinity Dose
B2.Stammheim Torturkammer
B3.Retard
B4.Epilept: Convulse
B5.Kaltbruchig Acideath