26 May 2010

Clock DVA - Thirst [LP/Fetish FR2002 1981 UK]

Clock DVAは英国の工業都市シェフィールドで1978年に Adi NewtonとSteven "Judd" Turnerで結成されたインダストリアル、ポスト・パンクバンド。バンド名は影響を受けたAnthony Burgessの小説「時計じかけのオレンジ」が由来でDVAとはロシア語で"2"を示し、つまり2時という意味である。リーダーのAdi Newtonは同郷のThe Human Leagueの前身のThe Futuresのメンバーでもあった。当時Cabaret VoltaireやThrobbing Gristreなどとも交流が深く、1980年発表のカセット作品のWhite Souls In Black SuitsはCabaret VoltaireのChris Watsonが参加してWestern Worksスタジオで録音、ミックスされ、T.G主宰のIndustrial Recordsからリリースされた。1981年発表のThirstは彼らの2ndアルバム。このアルバムからメンバーにサックスのCharlie Collins、ギターのPaul Widger、ドラムのRoger Quailが加わった。音の方はインダストリル風な不穏なイントロで幕開けし、途中からリズム隊が加わり、その後は、うねる重低音なベースにフリーキーなサックスやノイジーなギター、Adi Newtonの押し殺すようなヴォーカルが加ってダークで緊張感あふれるファンクサウンドが展開される。フリー・ジャズ風なサックスプレイが圧倒的なSensorium、シングルになったキャッチーなフレーズの4 Hours、シャーマニックな雰囲気の中、ノイジーなギターとサックスが荒れ狂って絡んでくるImpressions Of African Winterと名曲揃いで聴き応え充分のアルバムである。


《Track List》
A1 Uncertain (7:04)
A2 Sensorium (2:38)
A3 White Cell (4:38)
A4 Piano Pain (3:15)
A5 Blue Tone (5:57)
B1 North Loop (4:50)
B2 4 Hours (4:00)
B3 Moments (6:25)
B4 Impressions Of African Winter (5:26)


25 May 2010

A Certain Ratio - To Each... [LP/Factory FACT 35 1981 UK]

A Certain Ratio(ア・サーテン・レイシオ)は英国マンチェスター出身のコールド・ファンク・バンド。1978年にヴォーカルのSimon Toppingを中心に結成され、Joy Divisionらと共に初期Factoryレーベルを代表するグループである。バンド名はBrian Enoの曲の歌詞の一節から取って付けられた。Factory社長のTony Wilsonに気に入られ、設立間もないFactoryレーベルと契約。1979年にMartin "Zero"Hannettプロデュースの7"シングル「All Night Party」でデビュー。この曲はJoy Divisionを彷彿とさせる暗黒Post-Punkサウンド。この時点ではグループはドラムレスでスタートしていた。その後、グループの方針もあり黒人ドラマーDonald Johnsonが加入してファンク色を強めて行く。このアルバムは1980年DemoとLiveを収録した限定販売のカセットのリリースを経て、1981年に発表された実質的1stアルバム。プロデュースはこのアルバムもMartin Hannettが担当している。基本的にはファンクがベースにはなっているが、開放的躍動感などはなく、不安感を掻き立てられるフリーキーなトランペット、空間を埋めるように漂う効果音、幽霊のようなヴォーカルがダビーに処理され、ダークかつクールな音空間。Martin HannettらしいレーベルメイトJoy Divisionとはまた違った暗黒の世界観だ。ACRのメンバーMartin Moscropは当時のエピソードとして「このアルバムはNYのスタジオで録音し、ファンキーなアルバムしようとしたが、プロデューサーのMartin Hannettがファンキーなドラマーの音をバスドラもスネアもハイハットもバラバラに録ってしまい、グルーヴがなくなってファンク感を殺してしまった。それとそのスタジオでは彼の気に入るおもちゃ(ディレイ、タイムモジュレーター)がなく、結局マンチェスターに戻り、機器の揃っているストロベリースタジオでEQをいじくりまわしてミックスダウンした。」と語っており、これが異様なファンクサウンドを生み出した一つの要因になってたようだ。 やはり、初期のFactoryレーベルの音はMartin Hannettのセンスに負う事が大きかったのである。コールド・ファンクの名盤。

《Track List》
A1 Felch (3:45)
A2 My Spirit (2:28)
A3 Forced Laugh (5:53)
A4 Choir (2:51)
A5 Back To The Start (7:49)
B1 The Fox (3:46)
B2 Loss (3:23)
B3 Oceans (3:30)
B4 Winter Hill (12:45)


24 May 2010

23 Skidoo - Seven Songs [Mini LP/Fetish FM 2008 1982 UK]

23Skidoo(トゥエンティスリー・スキドゥ)は英国はシェフィールド出身のエスノ・インダストリアル・ファンクバンド。1979年にFritz Catlin,Alex Turnbull, Johnny Turnbull, Sam Mills, Tom Heslopで結成された。バンド名の由来はAleister Crowley, William S. Burroughsなど、映画Julian Biggsの作品に登場する神秘的な啓蒙主義のフレーズにちなんで命名された。1981年に発表された彼らの1stシングル「Ethics」、2ndシングル「Last Words」では同郷のCabaret VoltaireのStephen MallinderとRichard H. Kirkがプロデュースしている。この1stミニアルバムはThrobbing Gristleのリリースで知られるFetish Recordsから1982年にリリースされ当時のUKインディー・チャート1位に輝いた作品。テープによるエレクトリックノイズや変調されたエスニックな楽器、金属打楽器に強烈なパーカッションなどがランダムに絡みながら、ブリブリのファンク・ビートで展開される混沌としたサウンド。このアルバムは28年前の作品だが、現在聴いても古さを感じさせない。The Pop GruopやRip Rig & Panic,Pigbag,A Certain Rationなどと共に現在でも評価が高い異形のファンク・バンド。2008年にはLTM Publishing (Les Temps Modernes)からこのアルバムも含め3種のアルバムがボーナストラック付きで再発されている。


《Track List》
A1 Kundalini
A2 Vegas El Bandito
A3 Mary's Operation
A4 Lock Groove
B1 New Testament
B2 IY
B3 Porno Base
B4 Quiet Pillage

23 May 2010

Lustmørd - Lustmørd [LP/Sterile SR 03 1982 UK]

英国のLustmord(ルストモード)は1980年初頭から活動するBrian Williamsのソロ・プロジェクトである。Lustmordは音響、映像、言語等各種媒体を混合させてサブリミナルアタックを行う情報神経戦、即ちT.G,N.E,S.P.K.によって展開されたインダストリアル・ミュージックにおけるマージナルマンであった。1983年には第三のメンバーとしてS.P.K.のツアーに参加し、S.P.K.の12インチシングル「Dekompotisiones」に協力している。また、C.T.I.のギグ、12インチシングル「Conspirasy Internatinal Two」にも協力した。この1stアルバムは1982年にNocturnal Emissions主宰のSterile Recordsからのリリース。このアルバムにはN.E、Monte Cazaza(PTV)、Glenn Michael Wallis(Konstruktivits)等が参加し、協力を得て制作された。音の方は歪んだ強迫的電子リズムに猛烈なハウリングノイズ、金属パーカッション、絶叫するヴォーカルなど空間すべてノイズで埋め尽くされる凄まじさ。T.GやN.Eをも凌駕する血生臭いノイズが収録されている。ただ、このアルバムは全体の構成が計算尽くされていて、ただの出鱈目ノイズ垂れ流し作品ではない。S.P.K.の2ndと並ぶインダストリアルノイズの傑作。このオリジナルアルバムは稀少がゆえ高値安定で入手困難ではあるがドイツのDark Vinyl Recordsから「A Document Of Early Acoustic & Tactical Experimentation」というアルバムが1991年にCDでリリースされ、1stアルバムに加えてボーナストラックでLive音源、コンピレーションアルバム参加時の音源が収録されている。 このアルバムは現在も比較的入手は容易である。

《Track List》
A1 At Thee Mountains Of Madness
A2 Headplate
A3 Sibling
A4 Murderwreker
B1 Slabstone
B2 Arise
B3 Kredo / Nemo
B4 Beast Of Burden Beast Of Prey

22 May 2010

Nocturnal Emissions - Tissue Of Lies [LP/Sterile EMISS 001 1981 UK]

1978年にNigel Ayers,Caroline Kの二人がThe Pumpというグループを結成し、数本のカセット作品を自主制作してスタートした。1981年に2月に初のヴィニール盤初回500枚限定の1stアルバム「Tissue Of Lies」をリリースし、このリリースを期にプロジェクト名を Nocturnal Emissionsに改名する。その年には自らのレーベルStrile Recordsを設立し、自身のレコードやカセットの他、M.BやLust Mord,S.P.K.などの作品もリリースしている。彼らはインタビューで「このプロジェクトは音楽というよりもむしろの心理戦に於ける戦法の一つである。」と語っており、メディアへの心理戦を仕掛けるファーストアタックとして精神病患者、囚人のインタビューや化学戦、超音波戦、テロリズム、武器工学、洗脳、拷問、ロボトミー、生体解剖等の情報のオーディオ・テープ、フィルムなどのマテリアルを「コントロール・テクノロジー」と彼らの呼ぶ情報採集によって集められ、それは様々な形で処理され、彼らの云う「心理戦」に応用された。この1stアルバムは当時から2年前位前までは入手困難なアルバムであり、長年聴く機会がなかったが オーストリアの再発専門のレーベルKlanggalerieから2008年にCDで400枚限定で再発され、ようやく聴く機会に恵まれた。音の方はT.Gや初期Cabsを凌駕し、電子ハーシュノイズに様々な機械音,破壊音、エフェクトを掛けたヴォーカルなどが断片的にコラージュされるインダストリアルサウンドでS.P.K.の「Information Overload Unit」を彷彿させるハードノイズ作品。

《Track List》
A1 When Were You Last In Control Of Your Dreams And Aspirations?
A2 You Tempt Me
A3 Limited Holocaust Engagement
A4 Down The Sink
A5 Shrubbish Factory
B1 Slow Decay
B2 Faith Invaders
B3 Backwards Man - Regressive Music

19 May 2010

Einstürzende Neubauten - Kollaps [LP/Zick Zack ZZ 65 1981 GER]

1980年に西ドイツでEinstürzende Neubauten(アインシュツルツェンデ・ノイバウテン=崩壊する新建築)はリーダーのBlixa Bargeldを中心に結成された。1stアルバム制作当時のメンバーはBlixa Bargeld, N.U.Unruh, F.M.Einheitでそれぞれの姓は「現ナマ」、「不穏」、「単位」の意味であり、もちろん偽名である。結成当初から現在に至るまでNeubautenの象徴となっている一つ目人間は、メキシコのトルテカ文明の遺跡の洞窟に描かれた壁画のものであり、Blixaが1980年に書物からの引用したもである。Neubautenと言えば鋼のスクラップを打ち、圧搾ドリル、電動ノコギリ、コイル等、様々なメタル・ジャンクを操る過激なイメージがあるが、元々はドラム担当のUnruhが金に困ってドラムキットを売ってしまい、仕方なく盗んだ廃品を利用してドラムキットもどきを作って使用したのがきっかけだったようだ。偶然の産物である。この1stアルバムはハンブルグのHafenklangスタジオにて1981年7~8月に録音・ミックスされ、上記のメンバーの3人に加え、後にメンバーとなるMark ChungがBassで参加している。音の方は荒っぽいパンクサウンドをベースにGuiterのフィードバックノイズ、圧搾ドリルでコンクリートを掘削する高周波ノイズなどの様々な電子ノイズにメタルジャンクのパーカッションが絡み、それらの音に独語独特の硬い語感でシャウトするBlixaのヴォーカルも加わりインパクト充分。このアルバムを聴くにつけ、インダストリアル系の音というのはドイツ語の語感と相性がよい気がする。まあ、彼らの場合は音だけでもインパクトは得られるがNeubautenや"ドイツ"のイメージを体現するBlixaのヴィジュアルや彼らのメタルジャンクのパーカッション、電ノコで火花を散らすパフォーマンスは凄まじいだけにLiveなどの映像を先に見てから入るほうが分かり易いかもしれない。SPKと共に80年代を代表するメタル・パーカッションバンドである。

《Track List》
A1 Tanz Debil (3:21)
A2 Steh Auf Berlin (3:45)
A3 Negativ Nein (2:25)
A4 U-Haft Muzak (3:38)
A5 Draussen Ist Feindlich (0:48)
A6 Hören Mit Schmerzen (2:32)
A7 Jet'm (1:20)
B1 Kollaps (8:02)
B2 Sehnsucht (1:18)
B3 Vorm Krieg (0:20)
B4 Hirnsäge (1:49)
B5 Abstieg & Zerfall (4:29)
B6 Helga (0:08)

18 May 2010

Chris And Cosey - Heartbeat [LP/Rough Trade Rough34 1981 UK]

1981年にThrobbing Gristleを離れた Chris CarterとCosey FanniTuttiがC.T.I(Creative Technology Institute)を結成する。彼らはChris And Coseyを名乗ってライヴを行い、レコードをリリース、またC.T.I名義では1983年にElemental 7 と1983年のヨーロッパツアーのライヴを収録した European Rendezvousの2作品のVHSビデオをCabaret Voltaire主宰のDoubleVisionからリリースしている。1984年には彼ら自身のレーベルConspiracy Internationalを設立。ロンドンから北東へ170キロ離れたノーフォーク地方の片田舎へ移り、常時使用できる8チャンネルのレコーディング/マスタリング設備を持つスタジオを設置した。 このアルバムはRough Tradeから1981年にリリースされた1st。音の方はThrobbing Gristleのノイズを取っ払い、ビヨビヨとうねるアナログシンセのエレクトリックリズムにエフェクトの掛かったCosey Fanni Tuttiのヴォイスが時折被さるポップなエレクトロサウンドが中心だが、Throbbing Gristleを彷彿とさせる不気味でインダストリアルな曲やアンビエントテクノ風な楽曲などバラエティに富んでいる。流石にThrobbing Gristleでサウンドの骨格を作ったChris CarterだけあってCosey Fanni Tuttiとのコンビネーションでシンプルで無機質な感じではあるが毒々しさがあちこちに散りばめられ、異様な緊張感を醸し出している。

《Track List》
A1 Put Yourself In Los Angeles (3:46)
A2 This Is Me (2:58)
A3 Voodoo (2:27)
A4 Moorby (2:38)
A5 Radio Void (2:19)
A6 Just Like You (3:18)
B1 Bust Stop (4:06)
B2 Useless Informat (4:41)
B3 Moving Still (4:29)
B4 Manic Melody (Hairy Beary) (3:41)
B5 Heartbeat (5:51)

17 May 2010

You've Got Foetus On Your Breat - Deaf [LP/Self Immolation WOMB OYBL 1 1981 UK]

本名J.G. ThirlwellことJim Foetusはオーストラリアのメルボルン生まれ。1978年に渡英すると、ロンドンのスクウォット暮らしを始めて、DAFやScritti Polittiのメンバーらと行動し、Virginメガ・ストアのバイヤー兼DJをしながら音楽活動を開始する。その後自身のレーベルSelf Immolationを立ち上げ、ここからリリースしたシングルでラジオDJのJohn Peelやそのリスナーの支持を集めた。Foetusのイメージで特徴的なのは、Scraping Foetus Off The Wheel やYou've Got Foetus On Your BreatあるいはFoetus Art TerrorismやFoetus Über Friscoなど同郷のS.P.K.のように様々な名義を使い、また、レコードジャケットにはロシア構成主義的なアートワークを好んで作品毎に使用していることだった。Foetusは長ったらしいプロジェクト名が付いてはいるが彼の完全なるワンマンプロジェクトである。音楽のスタイルでいうと割とインダストリアルのイメージで捉えられているがThrobbing GristleやS.P.K.、Cabaret Voltaireらとは違い、フリージャズ、パンク、ファンクなどの様々な音楽を解体し、そこにインダストリアルなフレーバーをMixさせて再構築するサウンドで、どちらかと言うとThe Pop Groupあたりに近いかもしれない。この作品は1981年発表の1stアルバム。自主制作で2000枚限定の少量プレスでリリースされたため、当時、オリジナルは中々お目に掛かれなかったが、1997年のアメリカのThirsty EarからCDで再発されて(これも少量限定4000枚)、ようやく聴くことができた作品。音質は81年作ということもあり、当時の機材でかつ宅録ということもあって、とにかく音がチープで3rd以降の作品のような爆発的な感じはない。しかし、このアルバムはそういうことを超えて彼のオリジナリティなスタイルがこの1stで確立している点が凄いと思う。全10曲おもちゃ箱をひっくり返したようなJunkサウンドが展開されている。それにしても彼のレコード・ジャケットのアートワークはいつ見ても秀逸で、このアナログ盤LPも世界中のコレクターから未だ人気があるようで高値安定で取引されている。

《Track List》
A1 New York Or Bust
A2 Is That A Line?
A3 Why Can't It Happen To Me?
A4 I Am Surrounded By Incompetence
A5 What Have You Been Doing?
B1 Today I Started Slogging Again
B2 Harold MacMillan
B3 Thank Heavens For Push Button Phones
B4 Flashback
B5 Negative Energy

16 May 2010

Portion Control - I Staggered Mentally [LP/In Phaze CP007 1982 UK]

Portion Control(ポーション・コントロール)は1980年に英国はサウス・ロンドンでDean Piavanni,、Ian Sharp、John Whybrewので結成され、Hard Rhythmic Electronicsを標榜したIndustrial、Electro-Punk、EBM(エレクトロニック・ボディミュージック)スタイルの3人組。Cabaret Voltaire、Front242、D.A.F.の様にメジャーには成れなかったが80年代後半にクラブを席巻したEBMアーティストの連中(Skinny Puppy, Front Line Assembly etc・・)やメジャー所ではあのDepeche Modeに多大な影響を与えた、知る人ぞ知る伝説のハードエレクトロニクスユニット。1983年には23Ski Dooや400Browsらが在籍したIlluminated Recordsと契約、84年まで3枚の12インチシングルと1枚のアルバムを発表し、同じく84年にはDepeche ModeのUK&Europian Tourのサポートを務めている。結成した1980年から数種類のMC作品をリリースしているが、このアルバムは1982年発表の1stLP作品。最初期のMC作品ではチープなシンセポップだったが、このアルバムでは、リズミックでハードなビートに過度にエフェクトを掛けたエレクトロニクス、打ち込みによるメタリックなパーカッションそして野獣のようなワイルドなボーカルとまだまだ荒削りだがEBMの原型が既に見て取れる。勿論彼らが使用した当時の機材とサンプラーなどの機材が発達した80年代中盤以降のアーティストに比較すれば音の迫力では劣るが、アナログシンセを目一杯駆使し、インダストリアルな要素を上手く取り入れたハードエレクトロニクスの名盤。 オリジナルのLPは現在でも人気らしく高値安定で取引されていて入手困難だが、彼らのウェブサイト《→This》でこのアルバムを含む4枚のアルバムと12インチシングルをまとめたCD5枚組のArchiveが発売されている。1986年で一旦活動を中止していたが1993年に変名ユニットSolar Enemyで復活。2枚のアルバムと1枚のシングルを発表し再び活動休止。その後は過去の作品をウェブ上で発表していたが2004年Portion Controlとしてアルバム「Welcome」を発表し再復活を果たした。現在も活動継続中でアルバムもコンスタントに発表している。

《Track List》
A1 He Is Patriotic (3:18)
A2 Out Of Order (3:47)
A3 Plateau Stage (4:15)
A4 All Present And Correct (3:32)
A5 Karsic (3:21)
B1 Sex Crimes (4:31)
B2 Sure Is Kinda Spooky (2:29)
B3 Mass Disorder (5:02)
B4 Fiends (3:22)
B5 Sort Out (3:08)

15 May 2010

Deutsch Amerikanische Freundschaft - Die Kleinen Und Die Bösen[LP/Mute STUMM1 1980 UK]

D.A.F.の2ndアルバムは英国のMuteからのリリース。プロデューサーはConny Plank。D.A.F.の出世作である。D.A.F.と言えばGabi DelgadoとRobert Görlの二人組になってからのVarginからのボディ・ミュージック三部作がメジャーだが、この作品ではGuiterのWolfgang Spelmans、Synthesizer, Tape操作 のChrislo Haasが在籍しており4人のバンド編成で録音した最初で最後の作品だ。A Sideの1~7までがPlank Studioでの収録、B Sideの1~12がロンドンのElectric BallroomでのLiveを収録している。A Sideは1曲目のインダストリアル風サウンドから始まり、A2、A3、A5ではシーケンサーに筋肉ハンマービートが炸裂、そこにSpelmansの錯乱なノイジーギターが絡むサウンドはなかなかのインパクト。B .SideのWireの前座で行われたというLiveはかなり過激で曲はほとんどが1分代のスピーディーで短い曲だが、Gabiのテンションが尋常ではなく、吐き出すのようなボーカルと、Görlの硬質なハンマービート、狂った様に掻き鳴らすSpelmansのギターは、まさに発狂のエレクトリックパンク。しかし、この作品で早くも英国での成功を収めたD.A.F.はもはやドイツだけのバンドではなくなってしまい、今後のバンドの方針を巡って対立。Chrislo HassとWolfgang Spelmansが脱退。Chrisro HassはLiaisons Dangereusesを結成し、ハードコアなエレクトロニクスサウンドを展開、Wolfgang Spelmansは最初期(1stの頃)DAFのメンバーでもあったMichael Kemnerと Punkバンド、Mau Mauを結成している。D.A.F.に残ったGabiとGöllは英国へ渡ってVergin Recordsと契約し,プロデューサーConny Plankと組んでハンマービートとシーケンサーを駆使したハードコアな ダンスミュージックグループに変貌した。個人的にはできたらもう少し、このバンド編成4人組での作品を聴いてみたかった。

《Track List》
A1 Osten Währt Am Längsten
A2 Essen Dann Schlafen
A3 Co Co Pino
A4 Kinderfunk
A5 Nacht Arbeit
A6 Ich Gebe Dir Ein Stück Von Mir
A7 De Panne
B1 Gewalt
B2 Gib's Mir
B3 Auf Wiedersehen
B4 Das Ist Liebe
B5 Was Ist Eine Welle
B6 Anzufassen Und Anzufassen
B7 Volkstanz
B8 Die Lustigen Stiefel
B9 Die Kleinen Und Die Bösen
B10 Die Fesche Lola
B11 El Basilon
B12 Y La Gracia

14 May 2010

Sozialistisches Patienten Kollektiv - Leichenschrei [LP/Thermidor TR 09 1982 US]

S.P.K.の2ndアルバムはSozialistisches Patienten Kollektiv名義でオリジナルは米国のThermidor Recordsから1982年にリリースされた。ジャケットは今回も彼らお得意のかなりショッキングな写真が採用されている。(2ndエディションはジャケット違いで自身のレーベルSide Effectsからのリリース) 作品毎にプロジェクト名、メンバーを変化させてきたS.P.K.だが、このアルバムでもメンバーチェンジをしており、渡英し1stアルバムをリリースしたGreame Revell (Oblivon)がオーストラリアへ戻り、渡英せず仲違いしてたオリジナルメンバーのNe/H/iLことNeil Hillが復帰し,新メンバーJames Pinkerを加えた3人を中心に製作する。また、後にGreame Revellと行動を共にする、女性ボーカルのSinanや第三のメンバーと言われたLust Mordもクレジットされている。シドニーで録音された2ndアルバムは、1stの荒々しいノイズの洪水から大分整理され、エレクトロニクスリズムの強化、効果的なSE、それに絡む切れ味鋭いメタルパーカッションの比重も高くなったサウンドは、綿密な構成ともに完成度の高い作品になっている。勿論、エレクトロニクス・ノイズや精神病患者の声、女性の悲鳴、ポルノ、軍事訓練の映画、テレビとロシアの修道院の歌などをサンプリングしたというテープをコラージュするなどインダストリアル的な要素も満載だから、万人に薦められるわけではないがS.P.K.の最高傑作にしてインダストリアルミュージックの歴史に残る名盤。S.P.K.はこのアルバムをリリース後シドニーでのライブを2度こなし、小規模ながら米国ツアーを敢行するなど精力的な活動をする。その模様の1部は1983年にTwin VisionからリリースされたVHSビデオ「Despair」に収められ、Greame Revellがライブで羊の脳を喰いちぎったという伝説的パフォーマンスも収録されている。また、米国ツアーの1部であるカンサス州のローレンスで行われたライブはカセット「The Last Attempt At Paradise 」というタイトルで米国のFresh Soundsからリリースされるなど、一見バンド活動は順調に見えた。しかし、バンドの方向性を巡り、コマーシャルなアプローチも含めたアートプロジェクトを模索するGreame Revellとラジカルで政治的な活動を主張するNeil Hillが再び対立。Greame Revellは女性ボーカルのSinanと共に再び英国へ渡ってS.P.K.を続け、S.P.K.を脱退したNeil Hillはオーストラリアに残って新バンドのKPSを結成するも彼の妻Margaret Hillが心臓麻痺で急死し、それを悲観した1984年2月に自らの手でその生涯を閉じてしまった。彼は親日家であり日本にも2度来日するなど、日本での活動も視野に入れていたというだけに誠に残念だった。オーストラリアの精神病院の看護士と患者が結成したテロリズムを音楽に置き換えた奇跡的なノイズユニットは事実上このアルバムを持って終焉を迎えたのである。


《Parsonnel》
Oblivon: synthesizer,electronics, tape,metal percussion,vocals
Ne/H/iL: synthesizer,electronics,tape,vocals
Piker: drums,metal percussion


《Track List》
A1 GenetikTransmission
A2 Post-Mortem
A3 Desolation
A4 Napalm / Terminal Patient
A5 Cry From The Sanatorium
A6 Baby Blue Eyes
A7 Israel
A8 Internal Bleeding
A9 Chamber Musik
B1 Despair
B2 The Agony Of The Plasma
B3 Day Of Pigs
B4 Wars Of Islam
B5 Maladia Europa (The European Sickness)